9月25日に自身初の書き下ろしエッセイ集『いろいろ』(NHK出版)を発売する上白石萌音(かみしらいし・もね/23)がモデルプレスのインタビューに応じた。女優・歌手・ナレーターなど、肩書きにとらわれず幅広い分野で活躍する“表現者・上白石萌音”の執筆への思いとは―――。
上白石萌音初著書『いろいろ』
“ありのままの上白石萌音”を記録 執筆は「着飾らない言葉で書くように意識」
上白石:私は幼い頃から本が大好きだったので、夢のような気持ちと、恐れ多い気持ちが同時に湧いてきました。「ありのままを記録してみてください」という担当編集者さんの言葉に背中を押され、挑戦してみようと決心しました。
― 上白石さんは多忙かと思いますが、どのような時に執筆していましたか?執筆に際し、意識したことや工夫したこと、苦労したことなどがあれば教えてください。
上白石:執筆は仕事の合間や移動時間、休日など、余暇のほとんどを費やしていました。撮影合間に、もんぺ姿で泥だらけになりながら書いていた日もあったのですが(笑)、渦中の鮮度は大事だなと、今改めて感じています。パソコンに向かっていない時もエッセイのネタを探していたので、常に本のことが頭の中にありました。
― 完成した著書を見て、いかがですか?
上白石:本当に発売するんだなと実感が湧きました。ワードで書いていたのですが、実際にレイアウトが組まれて本の形になると、自分の文章じゃないような不思議な感覚になりました。大したことは書いていないのですが(笑)、すごく良いことが書いてあるみたいに見えて、本の力はすごいなと改めて感じています。
私は今回、執筆だけでなく、紙やフォントの選定、デザイン打ち合わせなどにも関わらせていただき、印刷工場見学もさせていただいたのですが、本がこんなに丁寧に、緻密に作られているということにとても感動しましたし、本好きとしてはたまらない時間でした。私の趣味趣向が完全に表れていて、手触りや温もりを大事に、紙を選定したのですが、カバーをめくった表紙の色が特にお気に入りです。
上白石萌音、執筆期間はSNSをセーブ「あえてエッセイに書いた」
上白石:辞書のように、単語に対して自分なりの考えや出来事を綴っていくのが、自分的にも書きやすく、シンプルで読みやすいものになるのではないかと思いました。書きたいことについて動詞を一旦メモしてから書くこともあれば、思ったことを書いてから最後に動詞を決めて副題にすることもあって、今思えば我ながら良い方針だったなと思います。
― 朝ドラ「カムカムエヴリバディ」のオーディションから合格、クランクインに至るまでの思いも書かれていましたが、自分の思いを残すというような意味もあったのでしょうか?
上白石:そうですね。たまたま朝ドラのタイミングが重なっていて、この時期は自分の人生の中ですごく大事な時間になるだろうと予感していたので、記憶としてだけでなく記録としても残しておきたいと思っていました。オーディションが決まった日、衣装合わせをした日、クランクインした日……やっぱり形に残さないと記憶はだんだん薄れていってしまうので、ほやほやの言葉を残せて良かったです。私は三日坊主なことが多く、日記もあまり続かない性格なので、このような機会をいただけたことに感謝しています。
上白石:最近特にSNSを見てくださる方が増えた分、何を載せたらいいのかわからなくなってしまって(笑)。エッセイを書いていたこともあり、SNSに書くんだったらエッセイに書こうと思うことが多く、それもあって少しSNSから遠ざかっていました。
― それこそ、藤原さくらさんと遊んだお話も、SNSではなくエッセイとして書いているのが新鮮で、読んでいてとても癒されました。
上白石:ありがとうございます(笑)。普通ならSNSで書くようなことを、あえてエッセイに書いてみました。飾らず、堅苦しくない、私自身がそういうカジュアルなエッセイが大好きなので、何かを得られるわけではないけど、暇な時にサラッと読めるような本にしたいなと思いました。
表現者・上白石萌音の思い
上白石:私は本が大好きだからこそ、今までは安易に手を出してはいけない場所という気がしていて、書き始めるのにもすごく勇気がいったのですが、実際に書いてみると、自分のために書いているような感覚がとてもありました。思いを綴ることで、前に進むために、自分の気持ちを整理することができました。
― 書き終えた時は、どのような気持ちになりましたか?
上白石:「やれた~!」と、すごく達成感がありました。このままアメリカかどこかに行きたいと思うくらい、身が軽かったです(笑)
上白石:明け透けに書きすぎたので、皆さんの反応が怖い部分があります(笑)。最近気づいたことがあって、私は役として演じたり、曲の中に入って歌ったりすることは好きなのですが、自己表現をすることがすごく苦手なんです。自分が前に出たり、自分の心の中を見せたりすることがすごく怖くて苦手なのですが、著書は自己表現の最たるものなので、正直不安です。でも「この人もこういうことを考えたりするんだ」「私もそうだ」と思える人が一人でもいてくれたら、書いて良かったと思います。そういうことに救われることって、すごくあると思うので。
― 今回の著書では短篇小説も書かれていますが、今後、文章の面で挑戦してみたいことや新たな目標はありますか?
上白石:今はこの著書を完成させた達成感でいっぱいなので、今すぐにもう一冊と言われたらなかなか挑戦しづらいとは思うのですが、自分の思いを言葉にするのは嫌いじゃないなと思ったので、いつかまた機会があれば挑戦できたらいいなと思います。ただ、小説は難しすぎて、ひとつしか書いていないのにネタが尽きてしまったので(笑)、エッセイや、本を読んだ記録、子ども向けのお話などを書けたらと考えています。
上白石萌音の夢を叶える秘訣
上白石:上手くいかなかったことや、苦しかったこと、悲しかったことは、実は成功体験よりも糧になると思っています。すごく辛い思いをした後のほうが、意外とすらすら書くことができて、苦しんだり痛みを知ったりしたら、より人に優しくできるし、しんどくてもその経験は無駄じゃないんだと、今回エッセイを通してすごく感じました。なるべく傷つきたくはないですが、その傷はちゃんと勲章になります。感じたことを大事にしていれば、長い目で見たら、いつか役に立つ時がきっと来るはずです。
上白石:本当に隠すものがないくらい結構オープンにしていろいろと書いてしまったので、あとは好きに読んでください!という感じです(笑)。全然難しい本ではないので、本が苦手だという方も気軽に手に取って、「活字ってこんなに簡単に読めるんだ」と思ってもらえたら嬉しいですし、いろいろな心の機微を書いたので、何かひとつでも共感する場所を見つけて、ちょっとでも心が軽くなってもらえたら嬉しいです。
― 素敵なお話をありがとうございました。
上白石萌音(かみしらいし・もね)プロフィール
1998年1月27日生まれ。鹿児島県出身。2011年に第7回「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞受賞し芸能界入り。2014年、映画「舞妓はレディ」で初主演、日本インターネット映画大賞・ニューフェイスブレイク賞、日本映画ベストインパクト賞、全国映連賞・女優賞、第38回日本アカデミー賞・新人俳優賞など各賞を受賞。2016年、映画「ちはやふる -上の句/下の句-」「溺れるナイフ」に出演し注目を集め、驚異的な大ヒットを記録している映画「君の名は。」では、ヒロイン・宮水三葉役を務めた。からの記事と詳細
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