8月17日夜8時より、お笑いコンビ・雨上がり決死隊の解散が、本人たちから発表された。といっても、テレビではなく、ネットテレビ局「ABEMA」とYouTube「吉本興業チャンネル」で配信された「アメトーーク特別編 雨上がり決死隊 解散報告会」だった。もっとも翌日、各局の情報番組などが、この動画をこぞって取り上げたことに疑問を抱いた視聴者は少なくないのではないだろうか。これが意味することとは?
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《平成元年にコンビ結成して約32年たちましたが、本日をもちましてコンビを解散いたします》
こう言って頭を下げた、宮迫博之(51)と蛍原徹(53)。およそ2年ぶりのコンビ共演の場は、彼らにとって初の全国ネットの冠番組「雨上がり決死隊のトーク番組 アメトーーク!」(テレビ朝日)のセットだった。
現在、自身のYouTubeチャンネルを主な活動の場としている宮迫は、久しぶりにテレビのセットを使えることに感動していた。
宮迫への決別
宮迫:このセットがどれだけすごくてお金がかかっててとか。自分でユーチューブ内で番組やると、階段1段上げるだけで「そんな値段違うの!」とか。もうビックリすることだらけ。スタッフは雇ってますけれど、テレビのスタッフがどれほど優秀だったんだとか。
彼がいかにテレビ復帰を願っているかがよくわかる発言だった。そして、「テレビ朝日さん、ありがとうございました」と繰り返していたにもかかわらず、テレ朝では放送されず、同局が出資する「ABEMA」による配信だったのだ。
これに対してSNSでは、《テレ朝の宮迫への決別か》といった声も上がっていた。ところが、「吉本興業が宮迫に突きつけた“完全決別”だった」と言うのは、民放ディレクターだ。
「番組でも、今年4月に蛍原さんから解散を切り出したと言っていましたが、宮迫さんにとっては、コンビ解消は地上波テレビへの復帰への道が閉ざされることになるため、ずっと断り続けていた。しかし、実際は吉本興業が今回の解散発表を進めてきたのです。吉本は2年前に宮迫とは契約解除しているにもかかわらず、彼が『吉本に戻りたい』と言ってみたり、彼のYouTubeに吉本の後輩芸人などを出演させることを、快く思っていませんでした。所属する芸人には、『宮迫のYouTubeチャンネルには出演しないように』とも言ってきましたが、あまり強制力もなかったため、古くからつきあいのある芸人たちは彼のYouTubeに出演してきた。これらをやめさせたかったんです。あえて彼らの冠番組『アメトーーク!』のセットを使い、正式な解散発表であることを視聴者や芸人にも知らしめ、さらに『今後、絶対に宮迫を起用するなよ』というメッセージを全テレビ局に伝えるための公式イベントなんです」
なぜそんなことが言えるのだろうか。
吉本が各局に配った
「発表の翌日の朝、テレ朝のみならず民放各局の情報番組で、配信された動画が使用されていたのはご存知ですか。テレ朝のセットで撮影された動画ですから、普通では考えられないことです。もしテレ朝が地上波で放送したとすれば、その素材を他局で放送するには、数秒でも数万円という素材借用代金が発生します。どこのテレビ局でも制作費は削減されていますから、イラストや過去の写真などの画像を使って、フリップで説明するわけです。配信の素材であれば多少は安くはなるでしょうが、それでも躊躇するはずです。にもかかわらず、一斉に動画を流したのはなぜか。吉本興業チャンネルの動画の完パケ素材を各テレビ局に配ったからですよ」
もちろん無料だという。
「《“マルC”テレビ朝日》というクレジットを入れさえすれば、何秒でも使用できるというわけです。そこで各局は揃って、前日の配信素材を使いたいだけ使用したわけです」
どの局を見ても、雨上がり決死隊が解散したことは周知されたわけだ。
「しかも、編集された動画は、宮迫のイメージダウンと蛍原のイメージアップにつながる内容となっていました。今後、宮迫は雨上がりのコンビ名を使えなくなり、蛍原だけは吉本に残って再スタートを切ることを印象づけることもできた。以後、『アメトーーク!』に宮迫が出演することはありませんが、番組が継続することも宣伝できたわけです」
万事、吉本の狙い通りとなったようだが、さらなる目的もあったという。
「これまで宮迫は、吉本や吉本芸人を使って、自身のYouTubeチャンネルの登録者数(現在142万人)を増やしてきました。それに対し吉本は、今回の解散発表を吉本興業チャンネルで配信したわけです。発表時間はYouTubeのゴールデンタイムである夜8時からとし、注目度も再生数も伸び、わずか12時間で600万回以上も再生された。見逃し配信は18日の夜11時59分まででしたが、18日は朝から各局で取り上げたため、さらに注目されました。これまで宮迫にやられてきたことを、吉本は“倍返し”したわけです」
デイリー新潮取材班
2021年8月23日 掲載
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