「日本のいちばん長い日」「ノモンハンの夏」など昭和史に光をあてた作家の半藤一利(はんどう・かずとし)さんが死去したことが12日分かった。90歳だった。
東京生まれ。東京大卒業後、文芸春秋に入社。編集者として軍事評論家の故伊藤正徳さんの仕事を手伝ったことなどから、戦史や昭和史研究を深めていった。
1965年には同僚の編集者らとともに執筆した「日本のいちばん長い日」を大宅壮一名義で発表した。太平洋戦争終結を決定した45年8月15日正午までの24時間を、軍人など当事者の聞き取りでまとめた作品はベストセラーとなり、映画化もされた。95年には半藤一利名義で追加取材を含めた決定版を出した。
編集者として培った取材力を生かし、存命する当事者からさまざまなエピソードを聞き出し、改版過程で偽証をふるい落としていく手法はオーラルヒストリー研究の先駆としても評価されている。
文芸春秋では「週刊文春」編集長、「文芸春秋」編集長、同社専務などを歴任。多くの作家との交流をもった。
自身も作家として、「漱石先生ぞな、もし」(新田次郎文学賞)、「ノモンハンの夏」(山本七平賞)、「昭和史 1926―1945」(毎日出版文化賞特別賞)など精力的な執筆活動を続けた。江戸っ子らしい軽妙な語り口は、歴史の専門研究の成果を広く一般の読者につないでいく仕事だった。
近代史の研究者らとともに勉強会を開き、多くの史料に目を通すとともに、「歴史探偵」と自称し、昭和史の語り部として日本の近代への関心を高めた。テレビの歴史番組などにも出演していた。
2015年に菊池寛賞。19年には本紙別刷りbeで「歴史探偵おぼえ書き」を連載した。
妻の末利子さんは夏目漱石の孫。
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