元SMAP森且行(46=川口)が悲願のSG制覇。優勝戦は12Rで10周回、5100メートルで争われ、6周回で先頭に立った森がそのまま押し切って、1997年7月のデビュー以来、24年目で念願のオート界最高峰のタイトルを奪取した。表彰式では涙声で喜びを表すなど、悲願への長い道のりに感極まった。

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森のデビュー戦の異様な風景は、今でも忘れることができない。

通常の倍という3万5000人が詰めかけ、金網際をカメラを手にした女性たちが占拠した。当時のオート場に黄色い声が飛ぶことなどありえなかった。年季の入ったファンが「居場所がない」とぼやいていた。

ただ、そんな盛り上がりとは対照的に、周りにはピリピリ感が充満していた。ロッカー取材でアイドル時代の話を振るのは厳禁。関係者からは「『元SMAP』という呼称は使わないように」とも言われた。森は「色物扱い」をされることを極端に警戒していた。

デビュー前の取材の中で強く記憶に残っていることがある。小学生だった森少年はつぶした空き缶を靴の裏にはめ、改造した自転車で「オートごっこ」をしていたという。父に連れられてオート場に通う中で、小さな頃から芽生えた夢。それが本物だったからこそ「元アイドル森且行」ではなく「レーサー森且行」を見てほしかったのだ。

いつしか「元SMAP」の肩書も解禁された。時が流れてもひたすらレーサーを続けてきたのは、当時の覚悟が本物だった何よりの証しだろう。【97年森且行担当=鈴木良一】